関連記事 → 折紙の世界 2008-11-11 17:25
一枚の紙を使ってさまざまな形を生み出す折紙。
折紙は単なる遊びではない。そこには日本人が受け継いできた、文化や美意識が凝縮されている。誰でもできる簡単な折紙遊びから、折紙が作る驚きの世界まで——。
日本人と折紙——折紙を生んだ日本の心—
文●大橋晧也(日本折紙協会常任理事)
水田稲作文化と方形の美しさ
四角い紙を折って、さまざまな形を作り出す折紙。折紙という遊びは、日本人の生活にごく自然に受け入れられてきました。その背景には、古くから培われてきた日本の文化があるように思えます。
日本には稲作の長い歴史があります。水資源が比較的豊かであった日本では、土地の微妙な高低差を考えて水路を開き、直線的に水田を仕切って方形が連続する、独特の農村風景が生まれてきました。こうして日本人は、黄金色に実った稲穂が並ぶ方形の田んぼに、収穫の喜びを感じてきたのです。
一方、日本列島には、杉や檜など建築材にも恵まれる気候風土もあります。伝統的日本建築では、木の梁と柱による方形を基本とした建築構造が発達し、石やレンガでアーチやドームを築く、曲線や曲面を基本とした建築様式とは異なります。このように日本の里の風景は、直線が生む方形に囲まれてきたのです。日本人の心の中に、こうして方形や直線に対する愛着や美意識が芽生えました。
また限られた土地や資源を、どのように有効的に活用するか、という努力が、節約を美徳とする文化を育んできました。それは、一枚の布を無駄なく利用する、和服の仕立てにも繋がる、と考えることができるでしょう。
高校野球の決勝戦。勝利への願いを込めて応援席に飾られた千羽鶴(写真=毎日新聞社)